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皮膚弛緩症

執筆者:

Frank Pessler

, MD, PhD, Helmholtz Centre for Infection Research

レビュー/改訂 2020年 10月
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皮膚弛緩症は,たるんだひだとなって垂れ下がる弛緩した皮膚を特徴とする。診断は臨床的に行う。特異的な治療法はないが,ときに形成手術を行う。

皮膚弛緩症は遺伝性の場合もあれば後天性の場合もある。4つの遺伝形式が存在する:

まれに,乳児が発熱性疾患の後または特異的な薬物に曝露した後に(例,ペニシリンに対する過敏反応,胎児のペニシラミンへの曝露),後天性皮膚弛緩症に罹患することがある。小児または青年では,皮膚弛緩症は通常,発熱,多発性漿膜炎,または 多形紅斑 多形紅斑 多形紅斑は,標的状または虹彩状の皮膚病変を特徴とする炎症反応である。口腔粘膜が侵されることもある。診断は臨床的に行う。病変は自然に消退するが,しばしば再発する。多形紅斑は通常,単純ヘルペスウイルスやマイコプラズマなどの感染因子に対する反応として生じるが,薬剤に対する反応である場合もある。単純ヘルペスウイルスが原因で頻回または症候性の再発がみられる患者には,抗ウイルス薬による再発抑制療法が適応となる場合がある。... さらに読む 多形紅斑 を伴う重症疾患の後に発生する。成人では潜行性に,または様々な疾患(特に 形質細胞疾患 形質細胞疾患の概要 形質細胞疾患は,以下を特徴とする病因不明の多様な疾患群である: B細胞単一クローンの過剰な増殖 血清,尿,またはその両方に,構造的および電気泳動的に均一な(単クローン性)免疫グロブリンまたはポリペプチドのサブユニットの存在 (免疫グロブリンの構造的特徴および分類については, 抗体を参照のこと。)... さらに読む )に関連して発生することがある。これらの後天性症例における基礎となる異常は不明であるが,全ての型で断片化したエラスチンがみられる。

病態生理

皮膚弛緩症は,皮膚の弾力性低下につながる異常なエラスチン代謝によって起こる。根底にある遺伝子異常(例,ELNFBLN4FBLN5ATP6V0A2,またはATP7A遺伝子における)を同定できる先天性の症例を除いて,正確な原因は不明である。 銅欠乏症 銅欠乏症 銅は体内の多数のタンパク質の構成要素であり,体内の銅のほとんどは銅タンパク質と結合している。 銅欠乏症は,後天性のこともあれば,遺伝性のこともある。( ミネラル欠乏症および中毒の概要も参照のこと。) 銅の代謝を制御する遺伝的機序が正常であれば,食事による欠乏により臨床的に重大な銅欠乏症が生じることはまれである。原因としては以下のものがある: 小児期の重度のタンパク質欠乏症 持続性の乳児下痢症(通常,ミルクのみの食事と関連) さらに読む ,エラスチンの量および形態,ならびにエラスターゼおよびエラスターゼ阻害物質などのいくつかの因子が異常なエラスチン分解に関係する。

症状と徴候

遺伝性の型では,皮膚の弛緩は出生時から存在することも出生後に発生することもある;皮膚が正常にたるみひだ状に垂れている部位ではどこでも生じ,顔面で最も顕著である。罹児には,悲しげなまたはチャーチル風の顔貌(Churchillian facies),およびかぎ鼻がみられる。良性の常染色体劣性の型は,さらに知的障害および関節弛緩を引き起こす。消化管のヘルニアおよび憩室がよくみられる。重症例の場合,進行性の肺気腫が肺性心を引き起こすことがある。さらに,気管支拡張症,心不全,および大動脈瘤が起こることもある。

診断

  • 臨床的評価

  • ときに皮膚生検,合併症の検査

皮膚弛緩症の診断は臨床的に行う。特異的な臨床検査所見はないが,皮膚生検で弾性線維の異常が明らかにされることがある。心肺症状のある患者で,合併症(例,気腫,心拡大,心不全)がないか確認するために特定の検査(例,心エコー検査,胸部X線)を行うことがある。早期に発症した皮膚弛緩症患者または家族歴が示唆される患者には遺伝子検査が適応となるが,これは結果によっては子孫に遺伝するリスクおよび皮膚以外の臓器が侵されるリスクを予測しうるためである。

典型的な皮膚弛緩症は,皮膚の脆弱性および関節過可動性がないため, エーラス-ダンロス症候群 診断 エーラス-ダンロス症候群は,関節過可動性,皮膚の過弾力性,および広範な組織脆弱性を特徴とする遺伝性のコラーゲンの障害である。診断は臨床的に行う。治療は支持療法による。 遺伝形式は通常, 常染色体優性であるが,エーラス-ダンロス症候群は不均一性である。様々な遺伝子変異が様々なコラーゲンの量,構造,または形成に影響を与える。変異は,コラーゲン(例,I型,III型,V型)またはコラーゲン修飾酵素(例,コラーゲンを切断するプロテアーゼであるリジ... さらに読む 診断 と鑑別可能である。他の疾患によってときに局所的なたるんだ皮膚の部位が生じる。 ターナー症候群 症状と徴候 ターナー症候群の女児は,2つのX染色体のうち1つが部分的または完全に欠失した状態で出生する。診断は臨床所見に基づき,細胞遺伝学的分析で確定する。治療法は臨床像に応じて異なり,心奇形に対して手術を行うこともあれば,しばしば低身長に対する成長ホルモン療法と思春期発来異常に対するエストロゲン補充を行うこともある。 ( 染色体異常症の概要および 性染色体異常の概要も参照のこと。) ターナー症候群は世界中で出生女児の約1/2500に発生する。しか... さらに読む 症状と徴候 では,罹患女児の頸部の基部にみられる弛緩した皮膚のひだが成長とともに張ってきて翼状になる。 神経線維腫症 症状と徴候 神経線維腫症とは,互いに臨床像に重複がみられるが遺伝学的原因は明確に異なることが判明している,いくつかの関連疾患を総称する用語である。中枢または末梢神経を侵す様々な種類の良性または悪性腫瘍が発生し,しばしば皮膚の色素沈着斑がみられ,ときにその他の臨床像を呈する。診断は臨床的に行う。特異的な治療法はないが,良性腫瘍は外科的に切除することがで... さらに読む 症状と徴候 では,ときに片側性の懸垂状で蔓状の神経腫が発生するが,その形状および質感により皮膚弛緩症と鑑別される。

治療

  • ときに形成手術

皮膚弛緩症の特異的な治療法はない。ときに理学療法が皮膚の緊張を増すのに役立つ。

遺伝性皮膚弛緩症の患者では,形成手術により外観がかなり改善されるが,後天性の患者では改善の程度が比較的小さい。通常は合併症を伴わずに治癒するが,皮膚の弛緩が再発することがある。皮膚以外の合併症を適切に治療する。

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