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心血管系の先天異常の概要

執筆者:

Lee B. Beerman

, MD, Children's Hospital of Pittsburgh of the University of Pittsburgh School of Medicine

レビュー/改訂 2020年 12月
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乳児期に診断される最も頻度の高い先天性心疾患は,筋性部および膜性部 心室中隔欠損症 心室中隔欠損症(VSD) 心室中隔欠損症(VSD)は,心室中隔が開口している状態であり,両心室間の短絡を引き起こす。欠損孔が大きい場合,有意な左右短絡の発生につながり,乳児期に哺乳時の呼吸困難および発育不良を来す。胸骨左縁下部で粗大な全収縮期雑音が聴取されることが多い。繰り返す呼吸器感染症や心不全を来すことがある。診断は心エコー検査による。欠損孔は乳児期に自然閉鎖... さらに読む 心室中隔欠損症(VSD) であり,それに二次孔型 心房中隔欠損症 心房中隔欠損症(ASD) 心房中隔欠損症(ASD)は,心房中隔が開口している状態であり,左右短絡と右房および右室の容量負荷を引き起こす。小児期に症状が出現することはまれであるが,20歳以降に生じる長期合併症として,肺高血圧,心不全,心房性不整脈などがある。成人期とまれに青年期には,運動耐容能低下,呼吸困難,疲労,心房性不整脈などを呈することがある。II音の大幅な固... さらに読む が続き,これらを合わせた有病率は出生10,000人当たり48.4例である。最も頻度の高い チアノーゼ性先天性心疾患 チアノーゼ性心奇形 先天性心疾患は,最も頻度の高い先天奇形であり,出生児の1%近くに発生する( 1)。先天異常のうち,先天性心疾患は乳児期死亡の主要な原因である。 乳児期に診断される最も頻度の高い先天性心疾患は,筋性部および膜性部 心室中隔欠損症であり,それに二次孔型 心房中隔欠損症が続き,これらを合わせた有病率は出生10... さらに読む  チアノーゼ性心奇形 ファロー四徴症 ファロー四徴症 ファロー四徴症は,大きな心室中隔欠損,右室流出路閉塞および肺動脈弁狭窄,右室肥大,ならびに大動脈騎乗という4つの特徴から構成される。症状としては,チアノーゼ,哺乳時の呼吸困難,発育不良,高度チアノーゼの"tet"spell(突然発生して死に至ることもある重度のチアノーゼ発作)などがある。胸骨左縁上部で粗い収縮期雑音が単一II音とともに聴取... さらに読む ファロー四徴症 であり,その有病率は 大血管転位 大血管転位症(TGA) 大血管転位症(右旋性の場合)は,大動脈が右室から直接起始すると同時に,肺動脈が左室から起始した状態であり,結果として,肺循環および体循環が互いに独立して平行する状態となる;そのため,酸素化された血液は右心系と左心系を連結する開口部(例,開存した卵円孔,心室中隔欠損[VSD])を通る以外,体循環に入ることができない。症状は主に重度の新生児チ... さらに読む 大血管転位症(TGA) の2倍である(出生10,000人当たり4.7例 vs. 2.3例)。全体として見ると, 大動脈二尖弁 大動脈二尖弁 大動脈二尖弁は,弁尖が2つしかない(正常では3つある)状態である。 大動脈二尖弁は,最も頻度の高い先天性の心血管異常である。出生児の0.5~2%にみられる( 1)。 大動脈二尖弁の患者は, 感染性心内膜炎, 大動脈弁逆流症,および/または 大動脈弁狭窄症を発症しやすい。大動脈二尖弁は,大動脈基部または上行大動脈の拡張や... さらに読む が最も頻度の高い先天異常であり,その有病率は0.5~2.0%にも上ると報告されている(2, 3 総論の参考文献 先天性心疾患は,最も頻度の高い先天奇形であり,出生児の1%近くに発生する( 1)。先天異常のうち,先天性心疾患は乳児期死亡の主要な原因である。 乳児期に診断される最も頻度の高い先天性心疾患は,筋性部および膜性部 心室中隔欠損症であり,それに二次孔型 心房中隔欠損症が続き,これらを合わせた有病率は出生10... さらに読む 総論の参考文献 )。

総論の参考文献

病因

先天性心疾患の発生には環境因子と遺伝因子が関与する。

一般的な環境因子としては,母体疾病(例,糖尿病,風疹,全身性エリテマトーデス)や母親による催奇形性物質(例,リチウム,イソトレチノイン,抗てんかん薬)の摂取などがある。母親の年齢は特定の遺伝学的異常(特に ダウン症候群 ダウン症候群(21トリソミー) ダウン症候群は21番染色体の異常であり, 知的障害,小頭症,低身長,および特徴的顔貌を引き起こす。診断は身体奇形と発達異常から示唆され,細胞遺伝学的検査によって確定される。管理方針は具体的な臨床像および奇形に応じて異なる。 ( 染色体異常症の概要も参照のこと。) 出生児における全体の発生率は約1/700であり,母体年齢が上がるにつれてリス... さらに読む ダウン症候群(21トリソミー) )の危険因子として知られており,ダウン症候群には心疾患が含まれることがある。母親の年齢が先天性心疾患の独立した危険因子であるかどうかは明らかでない。父親の年齢も危険因子となりうる(1 病因論に関する参考文献 先天性心疾患は,最も頻度の高い先天奇形であり,出生児の1%近くに発生する( 1)。先天異常のうち,先天性心疾患は乳児期死亡の主要な原因である。 乳児期に診断される最も頻度の高い先天性心疾患は,筋性部および膜性部 心室中隔欠損症であり,それに二次孔型 心房中隔欠損症が続き,これらを合わせた有病率は出生10... さらに読む 病因論に関する参考文献 )。

21トリソミー(ダウン症候群 ダウン症候群(21トリソミー) ダウン症候群は21番染色体の異常であり, 知的障害,小頭症,低身長,および特徴的顔貌を引き起こす。診断は身体奇形と発達異常から示唆され,細胞遺伝学的検査によって確定される。管理方針は具体的な臨床像および奇形に応じて異なる。 ( 染色体異常症の概要も参照のこと。) 出生児における全体の発生率は約1/700であり,母体年齢が上がるにつれてリス... さらに読む ダウン症候群(21トリソミー) ), 18トリソミー 18トリソミー 18トリソミーは,過剰な18番染色体によって引き起こされる病態で,通常は知的障害と出生時低身長のほか,重度の小頭症,心奇形,後頭部突出,変形を伴う耳介低位,やつれたような特徴的顔貌などの様々な先天奇形で構成される。出生前診断は細胞遺伝学的検査による;出生後診断は末梢血検査による。治療は対症療法である。... さらに読む 18トリソミー 13トリソミー 13トリソミー 13トリソミーは,過剰な13番染色体によって引き起こされる病態で,前脳,中顔面,および眼の発育異常,重度の知的障害,心臓の異常,ならびに出生時低身長で構成される。診断は細胞遺伝学的検査による。治療は対症療法である。 ( 染色体異常症の概要も参照のこと。) 13トリソミーは出生約10... さらに読む 13トリソミー Xモノソミー ターナー症候群 ターナー症候群の女児は,2つのX染色体のうち1つが部分的または完全に欠失した状態で出生する。診断は臨床所見に基づき,細胞遺伝学的分析で確定する。治療法は臨床像に応じて異なり,心奇形に対して手術を行うこともあれば,しばしば低身長に対する成長ホルモン療法と思春期発来異常に対するエストロゲン補充を行うこともある。... さらに読む ターナー症候群 (ターナー症候群)などの特定の数的染色体異常(異数性)に,先天性心疾患との強い関連が認められる。しかしながら,それらの異常が認められる先天性心疾患の症例は全体の5~6%にすぎない。

その他の症例の多くには,染色体の微細欠失微小欠失 微小欠失症候群および微小重複症候群 微小欠失症候群および微小重複症候群は,染色体の特定部分に隣接して存在する遺伝子群の超顕微鏡的な欠失または重複によって引き起こされる疾患群である。出生後診断では,臨床的な外観から疑い,できれば染色体マイクロアレイ解析または蛍光in situハイブリダイゼーションによって確定するのが望ましい。... さらに読む ),染色体の微細重複,または単一遺伝子の変異が関与している。しばしば,これらの変異によって,心臓だけでなく複数の臓器が侵される先天性症候群が発生する。その例としては, ディジョージ症候群 ディジョージ症候群 ディジョージ症候群は,胸腺および副甲状腺の低形成または形成不全であり,T細胞免疫不全症および副甲状腺機能低下症を引き起こす。ディジョージ症候群を有する乳児には,耳介低位,正中線口唇口蓋裂,小さく後退した下顎,眼間開離,短い人中,発達遅滞,および先天性心疾患がみられる。診断は臨床所見に基づき,免疫機能および副甲状腺機能の評価および染色体分析... さらに読む (22q11.2の微小欠失)やウィリアムズ(またはWilliams-Beuren)症候群(7p11.23の顕微鏡的欠失)などがある。先天性心疾患を合併する症候群を引き起こす単一遺伝子異常としては,フィブリリン-1遺伝子(マルファン症候群 マルファン症候群 マルファン症候群は結合組織の異常から成り,結果として眼,骨格,および心血管系の異常を来す(例, 大動脈解離につながる上行大動脈の拡張)。診断は臨床的に行う。治療には,上行大動脈の拡張を遅らせるための予防的β遮断薬投与,および予防的大動脈手術などがある。 マルファン症候群の遺伝形式は... さらに読む マルファン症候群 )やTXB5(Holt-Oram症候群)などがあり,PTPN11(ヌーナン症候群)変異もその可能性がある。単一遺伝子異常が孤発性の(すなわち症候群を構成しない)先天性心疾患を引き起こすこともある。

家系内での先天性心疾患の再発生リスクは,その原因に依存する。そのリスクは,de novo変異では無視できるほど小さく,症候群を構成しない多因子性の先天性心疾患では2~5%であり,常染色体優性変異が原因の場合は50%である。家系内有病率が9%と報告されている(4 病因論に関する参考文献 先天性心疾患は,最も頻度の高い先天奇形であり,出生児の1%近くに発生する( 1)。先天異常のうち,先天性心疾患は乳児期死亡の主要な原因である。 乳児期に診断される最も頻度の高い先天性心疾患は,筋性部および膜性部 心室中隔欠損症であり,それに二次孔型 心房中隔欠損症が続き,これらを合わせた有病率は出生10... さらに読む 病因論に関する参考文献 )ことを考慮すると,個々の患者で大動脈二尖弁を同定することは,家族のスクリーニングという観点で有益である。現在では,以前と比べて多くの先天性心疾患患者が成人まで生存し,一部は家族をもつようになってきていることから,遺伝因子を同定することが重要となっている。

病因論に関する参考文献

正常な胎児循環

胎児循環には以下の特徴がある:

  • 開存している動脈管(肺動脈を大動脈に連結)と卵円孔(右房と左房を連結)を介した血液の右左短絡が換気されていない肺を迂回している

この短絡は,肺細動脈抵抗が大きく,体循環(胎盤循環を含む)の血流への抵抗が比較的小さいことによって促進されている。右心からの拍出量の約90~95%が,肺を迂回して直接体循環へ流れる。胎児の動脈管は,胎児の全身PaO2が低く(約25mmHg),プロスタグランジンの局所産生があることによって開存が維持される。卵円孔は,心房圧の差によって開存が維持される:肺からの血液環流がほとんどないため左房圧は相対的に低いが,胎盤からの大量の血液還流のために右房圧は相対的に高い。

正常な胎児循環

胎児では,心臓の右側に入る血液はすでに胎盤を介して酸素化されている。肺は換気されていないため,肺動脈を通過しなければならない血液は少量である。心臓の右側から出る血液は,ほとんどが以下を介して肺を迂回する:

  • 卵円孔

  • 動脈管

正常であれば,この2つの構造は出生後まもなく閉鎖する。

周産期の変化

最初の数回の呼吸後には,このシステムに著しい変化が生じ,それにより以下の現象が起こる:

  • 肺血流量の増大

  • 卵円孔の機能的閉鎖

肺の拡張,PaO2の上昇,およびPaCO2の低下による血管拡張の結果,肺細動脈抵抗が急激に低下する。肋骨および胸壁の弾性力は肺の間質圧を低下させ,肺毛細血管の血流量をさらに増大させる。肺からの静脈還流量の増大によって左房圧が上昇し,左房と右房との圧力差が減少する;この作用が卵円孔の機能的閉鎖の一因である。

肺循環が確立すると,肺からの静脈還流量が増大して左房圧を上昇させる。空気呼吸はPaO2を増大させ,これにより臍動脈は収縮する。胎盤の血流が減少または途絶し,右房への血液還流を減少させる。こうして右房圧が低下し左房圧が上昇する結果,心房中隔の2つの胎児期構成要素(一次中隔および二次中隔)が共に押され卵円孔を通る血流が止まる。ほとんどの人でこの2つの中隔は最終的に融合し卵円孔は消滅する。

出生後まもなく,胎児の状態から反転して,体血管抵抗が肺血管抵抗より大きい状態へと移行する。これにより,開いている動脈管の血流方向が逆転し,血液の左右短絡が形成される(移行循環と呼ばれる)。この状態は,出生直後(肺血流量の増大および卵円孔の機能的閉鎖が起こる時点)から,動脈管が収縮する約24~72時間後まで持続する。大動脈から動脈管およびその栄養血管へ流入する血液はPO2が高く,このことがプロスタグランジン代謝の変化とともに,動脈管の収縮および閉鎖をもたらす。動脈管が閉鎖すると,成人型循環となる。この時点で,2つの心室は直列ポンプとして働くようになり,肺循環と体循環との間の大きな短絡は存在しない。

出生直後の数日間,ストレスを受けた新生児では胎児循環に戻ることがある。低酸素症および高炭酸ガス血症を伴う仮死は,肺細動脈の収縮および動脈管の拡張を引き起こし,上述の過程を逆行させ,今や 開いている動脈管 動脈管開存症(PDA) 動脈管開存症(PDA)とは,大動脈と肺動脈をつなぐ胎児期の交通路(動脈管)が出生後も開存している状態である。心臓に他の構造的異常がなく,肺血管抵抗の上昇もない場合,PDAにおける短絡は左右方向(大動脈から肺動脈)となる。症状としては,発育不良,哺乳不良,頻拍,頻呼吸などがある。胸骨左縁上部の連続性雑音と反跳脈がよく聴取される。診断は心エコ... さらに読む 動脈管開存症(PDA) ,再開通した卵円孔,またはその両方を介した右左短絡を生じさせる。その結果,このような新生児は, 遷延性肺高血圧症 新生児遷延性肺高血圧症 新生児遷延性肺高血圧症は,肺細動脈収縮状態の遷延またはその状態への逆転であり,肺血流量の極端な減少と心房および/または動脈管レベルでの右左短絡を引き起こす。症状および徴候としては,頻呼吸,陥没呼吸,酸素投与に反応しない重度のチアノーゼまたは酸素飽和度低下などがある。診断は病歴,診察,胸部X線,および酸素への反応による。治療法としては,酸素... さらに読む または胎児循環遺残(臍帯循環は存在しないが)と呼ばれる重度の低酸素状態に陥る。治療の目標は,肺血管収縮の原因となった状態を元に戻すことである。

病態生理

先天性心奇形は次のように分類される(先天性心奇形の分類 先天性心奇形の分類* 先天性心奇形の分類* の表を参照):

  • チアノーゼ性

  • 非チアノーゼ性(左右短絡または閉塞性病変)

先天性心奇形の生理学的な影響は,無症状の小児でみられる心雑音または脈拍異常から,重度のチアノーゼ,心不全,循環虚脱まで,非常に多彩である。

チアノーゼ性心奇形

  • 程度は様々であるが,脱酸素化された静脈血が左心に短絡すると(右左短絡),体循環系の動脈血酸素飽和度が低下する。

デオキシヘモグロビン濃度が5g/dL(50g/L)を超えると,チアノーゼが出現する。チアノーゼの持続による合併症としては, 赤血球増多 周産期の赤血球増多症および過粘稠度症候群 赤血球増多症とは赤血球量の異常な増加(新生児では静脈血ヘマトクリットが65%以上と定義される)であり,血管内の血液の泥化(sludging),およびときに血栓を伴う過粘稠につながることがある。新生児赤血球増多症の主な症候は非特異的であり,赤味がかった皮膚,哺乳困難,嗜眠,低血糖,高ビリルビン血症,チアノーゼ,呼吸窮迫,および痙攣などがある... さらに読む ,ばち指,血栓塞栓症(脳卒中など),出血性疾患,脳膿瘍,高尿酸血症などがある。未修復の ファロー四徴症 ファロー四徴症 ファロー四徴症は,大きな心室中隔欠損,右室流出路閉塞および肺動脈弁狭窄,右室肥大,ならびに大動脈騎乗という4つの特徴から構成される。症状としては,チアノーゼ,哺乳時の呼吸困難,発育不良,高度チアノーゼの"tet"spell(突然発生して死に至ることもある重度のチアノーゼ発作)などがある。胸骨左縁上部で粗い収縮期雑音が単一II音とともに聴取... さらに読む ファロー四徴症 の乳児では,高度チアノーゼ発作(hypercyanotic spell)が起こりうる。

肺血流量は奇形の種類に応じて減少,正常,または増加(しばしばチアノーゼに加えて心不全を引き起こす)となり,結果として様々な重症度のチアノーゼを呈する。心雑音が様々な大きさで聴取されるが,特異的ではない。

左右短絡

  • 左心(左房または左室)または大動脈から供給される酸素化された血液が,左心と右心をつなぐ開口部または交通を通って,右心(右房または右室)または肺動脈へ短絡する。

出生直後は肺血管抵抗が高いため,この交通を通る血流は軽微であるか,両方向性である。しかしながら,生後24~48時間以内には,肺血管抵抗の低下が進み,左心系から右心系へ流れる血流量が増加する。右側に流れ込んだ余分な血流は,肺血流量と肺動脈圧を様々な程度まで増大させる。この増大幅が大きいほど,より重度の症状が生じ,少量の左右短絡では典型的には症状や徴候は生じない。

高圧の短絡(心室または大血管レベルで生じるもの)は生後数日ないし数週間後に明らかになるが,低圧の短絡(心房中隔欠損 心房中隔欠損症(ASD) 心房中隔欠損症(ASD)は,心房中隔が開口している状態であり,左右短絡と右房および右室の容量負荷を引き起こす。小児期に症状が出現することはまれであるが,20歳以降に生じる長期合併症として,肺高血圧,心不全,心房性不整脈などがある。成人期とまれに青年期には,運動耐容能低下,呼吸困難,疲労,心房性不整脈などを呈することがある。II音の大幅な固... さらに読む )はかなり後になってから明らかとなる。無治療の場合,肺血流量の増加と肺動脈圧の上昇によって肺血管疾患が引き起こされ,最終的には アイゼンメンジャー症候群 アイゼンメンジャー症候群 アイゼンメンジャー症候群は,大量の心内左右短絡または大動脈から肺動脈への左右短絡が是正されない場合に発生する合併症である。肺血管抵抗が徐々に増大するにつれて,やがて重度の肺高血圧が生じ,右左短絡の進行性の増大を伴う両方向性短絡に至る。チアノーゼと低酸素症により,後述の複数の合併症がもたらされることは不可避である。身体所見は基礎にある異常お... さらに読む に至る。大量の左右短絡(例,大きな 心室中隔欠損症 心室中隔欠損症(VSD) 心室中隔欠損症(VSD)は,心室中隔が開口している状態であり,両心室間の短絡を引き起こす。欠損孔が大きい場合,有意な左右短絡の発生につながり,乳児期に哺乳時の呼吸困難および発育不良を来す。胸骨左縁下部で粗大な全収縮期雑音が聴取されることが多い。繰り返す呼吸器感染症や心不全を来すことがある。診断は心エコー検査による。欠損孔は乳児期に自然閉鎖... さらに読む 心室中隔欠損症(VSD) [VSD], 動脈管開存症 動脈管開存症(PDA) 動脈管開存症(PDA)とは,大動脈と肺動脈をつなぐ胎児期の交通路(動脈管)が出生後も開存している状態である。心臓に他の構造的異常がなく,肺血管抵抗の上昇もない場合,PDAにおける短絡は左右方向(大動脈から肺動脈)となる。症状としては,発育不良,哺乳不良,頻拍,頻呼吸などがある。胸骨左縁上部の連続性雑音と反跳脈がよく聴取される。診断は心エコ... さらに読む 動脈管開存症(PDA) [PDA])では,過度の肺血流および左室容量負荷が生じることで,心不全の徴候が出現し,乳児期にはしばしば発育不良を来す。大量の左右短絡は,肺コンプライアンスの低下と気道抵抗の上昇にもつながる。これらの因子は, RSウイルス RSウイルス(RSV)感染症およびヒトメタニューモウイルス感染症 RSウイルス感染症とヒトメタニューモウイルス感染症は,特に乳児および幼児において,季節性の下気道疾患を引き起こす。無症候性ないし軽症で済むこともあれば,細気管支炎や肺炎を伴った重症となることもある。診断は臨床的に行うのが通常であるが,臨床検査による診断も可能である。治療は支持療法による。... さらに読む 感染症やその他の上気道または下気道感染症のある乳児において入院のリスクを高める。

閉塞性病変

  • 血流の閉塞が起こり,それにより閉塞部をまたいで圧較差が生じる。

心不全

先天性心奇形の中には,血行動態に有意な変化を起こさないものも存在する(例, 大動脈二尖弁 大動脈二尖弁 大動脈二尖弁は,弁尖が2つしかない(正常では3つある)状態である。 大動脈二尖弁は,最も頻度の高い先天性の心血管異常である。出生児の0.5~2%にみられる( 1)。 大動脈二尖弁の患者は, 感染性心内膜炎, 大動脈弁逆流症,および/または 大動脈弁狭窄症を発症しやすい。大動脈二尖弁は,大動脈基部または上行大動脈の拡張や... さらに読む ,軽度の大動脈弁狭窄)。それ以外の心奇形では,圧負荷または容量負荷が生じる結果,ときに 心不全 心不全 心不全は心室機能障害により生じる症候群である。左室不全では息切れと疲労が生じ,右室不全では末梢および腹腔への体液貯留が生じる;左右の心室が同時に侵されることもあれば,個別に侵されることもある。最初の診断は臨床所見に基づいて行い,胸部X線,心エコー検査,および血漿ナトリウム利尿ペプチド濃度を裏付けとする。治療法としては,患者教育,利尿薬,ア... さらに読む 心不全 を来す。心不全は,心拍出量が身体の代謝要求を満たすのに不十分となった場合,または心臓が静脈還流量を十分に処理できなくなった場合に発生し,肺うっ血(左室不全),各体位で下方にある組織および腹部内臓で主に生じる浮腫(右室不全),またはその両方を引き起こす。乳児期および小児期における心不全の原因としては,先天性心奇形以外にも多くのものが存在する(小児における心不全の一般的な原因 小児における心不全の一般的な原因 小児における心不全の一般的な原因 の表を参照)。

動脈管依存性先天性心疾患

動脈管は肺動脈と大動脈をつなぐ正常な交通であり,適正な胎児循環に必要である。出生時には,PaO2の上昇とプロスタグランジン濃度の低下が起こることにより,典型的には生後10~15時間以内に,動脈管の閉鎖が始まる。

先天性心疾患の中には,体血流(例, 左心低形成症候群 左心低形成症候群 左心低形成症候群は,左室および上行大動脈の低形成,大動脈弁および僧帽弁の発育不良および低形成(大動脈閉鎖をしばしば呈する),心房中隔欠損,ならびに動脈管開存から構成される。プロスタグランジンの点滴によって動脈管の生理的閉鎖を阻止しない限り,心原性ショックにより確実に死に至る。大きな単一II音と非特異的な収縮期雑音がよく聴取される。診断は緊... さらに読む 左心低形成症候群 ,重篤な 大動脈弁狭窄症 大動脈弁狭窄症 大動脈弁狭窄症(AS)は,大動脈弁が狭小化することによって,収縮期の左室から上行大動脈への血流が妨げられる病態である。原因としては,先天性二尖弁,石灰化を伴う特発性の変性硬化,リウマチ熱などがある。無治療のASは進行して症候性となり,古典的三徴(失神,狭心症,労作時呼吸困難)のうち1つまたは複数が生じ,心不全および不整脈を来すこともある。... さらに読む 大動脈弁狭窄症 大動脈縮窄症 大動脈縮窄症 大動脈縮窄症は,大動脈内腔の限局的な狭小化によって上肢高血圧,左室肥大,ならびに腹部臓器および下肢の灌流不良が生じる病態である。症状は奇形の重症度に応じて異なり,頭痛や胸痛,四肢冷感,疲労,跛行などから,劇症性心不全やショックに至るまで様々である。縮窄部上で弱い血管雑音が聴取されることがある。診断は心エコー検査またはCTもしくMRアンギオ... さらに読む )または肺血流(肺動脈閉鎖症 心室中隔欠損を伴わない肺動脈閉鎖症 その他の先天性心奇形としては,以下のものが挙げられる: 大動脈肺動脈窓 修正大血管転位症 両大血管右室起始症 エプスタイン奇形 さらに読む や重症 ファロー四徴症 ファロー四徴症 ファロー四徴症は,大きな心室中隔欠損,右室流出路閉塞および肺動脈弁狭窄,右室肥大,ならびに大動脈騎乗という4つの特徴から構成される。症状としては,チアノーゼ,哺乳時の呼吸困難,発育不良,高度チアノーゼの"tet"spell(突然発生して死に至ることもある重度のチアノーゼ発作)などがある。胸骨左縁上部で粗い収縮期雑音が単一II音とともに聴取... さらに読む ファロー四徴症 などのチアノーゼ性心疾患)の維持において動脈管の開存に依存するものがある。そのため,それらの疾患では,根治的修復(通常は手術)を行うまで,外因性のプロスタグランジンの点滴により動脈管の開存を維持するのが不可欠となる。

症状と徴候

先天性心疾患の臨床像は多様であるが,一般的には以下のものがみられる:

  • 雑音

  • チアノーゼ

  • 心不全

  • 脈拍減弱または脈拍欠損

このほかに身体診察でみられる異常としては,循環性ショック,灌流不良,異常なII音(S2―単一または大幅な分裂),収縮期クリック,奔馬調律,徐脈,頻脈,不整脈などがある。

雑音

左右短絡および閉塞性病変の大半では収縮期雑音が発生する。収縮期雑音および振戦(スリル)は,発生源に最も近い体表部位で最も著明となるため,その位置の同定は診断に役立つ。肺動脈弁または大動脈弁を通過する血流量が増加すると,漸増漸減性の収縮中期(駆出性収縮期)雑音が発生する。房室弁を介した逆流または心室中隔欠損を介した血流が存在する場合には,全収縮期(汎収縮期)雑音が発生し,その強度が上がるにつれてI音(S1)が不明瞭になる。

チアノーゼ

中枢性チアノーゼは,口唇と舌および/または爪床の青色調変色を特徴とし,これはデオキシヘモグロビンが増加している(5g/dL[50g/L]以上)ときにみられ,血中酸素レベルの低下(通常は酸素飽和度85%未満)を意味する。口唇または爪床チアノーゼを伴わない口囲および肢端チアノーゼ(手足のチアノーゼ)は,低酸素血症ではなく末梢血管の収縮により起こるものであり,新生児では一般的な正常所見である。チアノーゼが長期間持続する児童では,ばち指がみられることが多い。

心不全

乳児では,心不全の症状または徴候として以下のものがみられる:

  • 頻脈

  • 頻呼吸

  • 哺乳中の呼吸困難

  • 発汗,特に哺乳中

  • 不穏,易刺激性

  • 肝腫大

哺乳時に呼吸困難が起こると,哺乳量が不十分になって発育不良を呈するが,これは心不全による代謝必要量の増加や頻回の気道感染症によって,さらに悪化する場合がある。成人や児童とは対照的に,ほとんどの乳児では頸静脈怒張や就下性の浮腫を呈することはないが,ときに眼窩周囲に浮腫が発生する。肝腫大は乳児の心不全における特徴的な所見である。 心不全 症状と徴候 心不全は心室機能障害により生じる症候群である。左室不全では息切れと疲労が生じ,右室不全では末梢および腹腔への体液貯留が生じる;左右の心室が同時に侵されることもあれば,個別に侵されることもある。最初の診断は臨床所見に基づいて行い,胸部X線,心エコー検査,および血漿ナトリウム利尿ペプチド濃度を裏付けとする。治療法としては,患者教育,利尿薬,ア... さらに読む 症状と徴候 の児童でみられる所見は,成人患者のそれと同様である。

心奇形のその他の臨床像

新生児期には,一部の心奇形(例, 左心低形成症候群 左心低形成症候群 左心低形成症候群は,左室および上行大動脈の低形成,大動脈弁および僧帽弁の発育不良および低形成(大動脈閉鎖をしばしば呈する),心房中隔欠損,ならびに動脈管開存から構成される。プロスタグランジンの点滴によって動脈管の生理的閉鎖を阻止しない限り,心原性ショックにより確実に死に至る。大きな単一II音と非特異的な収縮期雑音がよく聴取される。診断は緊... さらに読む 左心低形成症候群 ,重篤な大動脈弁狭窄,大動脈弓離断, 大動脈縮窄症 大動脈縮窄症 大動脈縮窄症は,大動脈内腔の限局的な狭小化によって上肢高血圧,左室肥大,ならびに腹部臓器および下肢の灌流不良が生じる病態である。症状は奇形の重症度に応じて異なり,頭痛や胸痛,四肢冷感,疲労,跛行などから,劇症性心不全やショックに至るまで様々である。縮窄部上で弱い血管雑音が聴取されることがある。診断は心エコー検査またはCTもしくMRアンギオ... さらに読む )において循環性ショックが最初の臨床像となることがある。粘膜の蒼白化またはチアノーゼがみられ,四肢は冷たく,脈は微弱になり,血圧は低く,刺激に対する反応も減弱するなど,極めて病的な様相を呈する。

小児にみられる胸痛は,通常は心臓性ではない。乳児では,胸痛は原因不明の著明な易刺激性(特に哺乳中または哺乳後)として顕在化し,肺動脈からの左冠動脈起始異常によって生じる可能性がある。児童および青年では,心臓の病態に起因する胸痛は労作時に認められるのが通常で,冠動脈異常, 心膜炎 心膜炎 心膜炎とは心膜の炎症であり,しばしば心嚢液貯留を伴う。心膜炎は,多くの疾患(例,感染症,心筋梗塞,外傷,腫瘍,代謝性疾患)によって引き起こされるが,特発性のことも多い。症状としては胸痛や胸部圧迫感などがあり,しばしば深呼吸により悪化する。心タンポナーデまたは収縮性心膜炎が発生した場合には,心拍出量が大きく低下することがある。診断は症状,心... さらに読む 心膜炎 心筋炎 心筋炎 心筋炎は,心筋細胞の壊死を伴う心筋の炎症である。心筋炎は,多くの疾患(例,感染症,心毒性物質,薬剤,サルコイドーシスなどの全身性疾患)によって引き起こされるが,特発性のことも多い。症状は様々で,疲労,呼吸困難,浮腫,動悸,突然死などがありうる。診断は症状のほか,心血管系危険因子がなければ心電図検査,心筋バイオマーカー,および心臓画像検査の... さらに読む 心筋炎 ,または高度の 大動脈弁狭窄 大動脈弁狭窄症 大動脈弁狭窄症(AS)は,大動脈弁が狭小化することによって,収縮期の左室から上行大動脈への血流が妨げられる病態である。原因としては,先天性二尖弁,石灰化を伴う特発性の変性硬化,リウマチ熱などがある。無治療のASは進行して症候性となり,古典的三徴(失神,狭心症,労作時呼吸困難)のうち1つまたは複数が生じ,心不全および不整脈を来すこともある。... さらに読む 大動脈弁狭窄症 によって生じる可能性がある。

失神は典型例では前兆症状なしに,しばしば労作に関連して生じるが, 心筋症 心筋症の概要 心筋症は心筋の原発性疾患である。冠動脈疾患や弁膜症,先天性心疾患といった構造的心疾患とは明確に異なる疾患概念である。心筋症は病理学的特徴に基づき,以下に示す3つの主な病型に分類される( 心筋症の病型の図を参照): 拡張型 肥大型 拘束型 虚血性心筋症という用語は,重症 冠動脈疾患の患者で(梗塞領域の有無にかかわらず)発生することがある,心... さらに読む (肥大型または拡張型),冠動脈起始異常,または遺伝性不整脈症候群(例, QT延長症候群 QT延長症候群とトルサード・ド・ポワンツ型心室頻拍 トルサード・ド・ポワンツは,QT延長を呈する患者でみられる特殊な形態の多形性心室頻拍である。速く不規則なQRS波を特徴とし,心電図の基線を中心にねじれたような形を呈する。この不整脈は自然に治まることもあれば,増悪して心室細動に移行することもある。有意な血行動態障害を引き起こし,しばしば死に至る。診断は心電図検査による。治療はマグネシウムの... さらに読む ,カテコールアミン誘発性多形性心室頻拍[CPVT], ブルガダ症候群 ブルガダ症候群 ブルガダ症候群は,心臓電気生理に異常を来す遺伝性疾患であり,失神および突然死のリスク増大をもたらす。 ( 不整脈の概要も参照のこと。) いくつかの変異が関与するが,そのほとんどは電位依存性心筋ナトリウムチャネルのαサブユニットをコードする さらに読む )など特定の異常に伴って生じる可能性がある。高校生年代のアスリートで最もよくみられる。

診断

  • パルスオキシメトリーによるスクリーニング

  • 心臓の診察

  • 心電図および胸部X線検査

  • 心エコー検査

  • ときに,心臓MRIまたはCT血管造影,心臓カテーテル検査と心血管造影

典型的には心エコー検査で診断可能であるが,心臓MRIまたはCT血管造影で,重要な解剖学的詳細を明らかにできる場合がある。奇形の確定診断または重症度の術前評価のため,ときに心臓カテーテル検査と心血管造影が必要になることがあり,治療を目的として行うことも増えてきている。

新生児スクリーニング

新生児期の先天性心疾患は臨床像が軽微となる場合や全く症候がみられない場合がある一方,重症先天性心疾患(critical congenital heart disease)の検出の失敗や遅れは新生児死亡や重大な合併症の発生につながる可能性があり,特に生後数時間または数日中に外科的治療や入院下での内科的治療を必要とする新生児の10~15%では,その可能性が高くなる。そのため,退院前に新生児全例に対してパルスオキシメトリーによる重症先天性心疾患のスクリーニングを実施することが推奨されている。生後24時間以上の時点でもスクリーニングを行い,以下のいずれかに1つでも該当する場合は陽性と判定する:

  • 部位を問わず酸素飽和度が90%未満である。

  • 右手と右足での酸素飽和度が,1時間間隔で実施した3回の測定においてともに95%未満である。

  • 右手(動脈管前)と右足(動脈管後)での酸素飽和度の絶対差が,1時間間隔でそれぞれ行った3回の測定で3%を超える。

スクリーニングで陽性となった新生児には,先天性心疾患および低酸素血症の他の原因(例,様々な呼吸器疾患,中枢神経系の抑制,敗血症)に関する包括的評価を全例で行うべきであり,典型的には胸部X線,心電図,心エコー検査のほか,しばしば血液検査などを施行する。パルスオキシメトリーによるスクリーニングの感度は75%を若干超える程度で,最も見逃されやすい先天性心疾患の病変は左室の閉塞性病変(例,大動脈縮窄)である。

治療

  • 内科的治療による心不全の安定化(例,利尿薬,アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬,β遮断薬,ジゴキシン,スピロノラクトン,塩分制限,選択された症例では酸素またはプロスタグランジンE1の投与)

  • 外科的修復またはカテーテルインターベンション

心不全の治療は病因によって大きく異なる。根治的治療としては,典型的には基礎にある問題の是正が必要である。

急性心不全症状またはチアノーゼを内科的治療で安定させた後には,ほとんどの患児で外科的またはカテーテル手技による修復が必要となるが,経時的に縮小ないし閉鎖する可能性が高い特定の心室中隔欠損症と軽度の弁機能障害は例外である。カテーテル治療としては以下のものがある:

新生児における心不全

出生後最初の1週間に生じた重度の急性心不全またはチアノーゼは,医学的緊急事態である。確実な血管アクセスを確保すべきであり,臍静脈カテーテルによるものが望ましい。

重症先天性心疾患が疑われるか確定診断されている場合は,プロスタグランジンE1の点滴静注を0.05~0.1μg/kg/分から開始すべきである。この時期に発症する心疾患の大半では,体血流(例, 左心低形成症候群 左心低形成症候群 左心低形成症候群は,左室および上行大動脈の低形成,大動脈弁および僧帽弁の発育不良および低形成(大動脈閉鎖をしばしば呈する),心房中隔欠損,ならびに動脈管開存から構成される。プロスタグランジンの点滴によって動脈管の生理的閉鎖を阻止しない限り,心原性ショックにより確実に死に至る。大きな単一II音と非特異的な収縮期雑音がよく聴取される。診断は緊... さらに読む 左心低形成症候群 ,重篤な 大動脈弁狭窄症 大動脈弁狭窄症 大動脈弁狭窄症(AS)は,大動脈弁が狭小化することによって,収縮期の左室から上行大動脈への血流が妨げられる病態である。原因としては,先天性二尖弁,石灰化を伴う特発性の変性硬化,リウマチ熱などがある。無治療のASは進行して症候性となり,古典的三徴(失神,狭心症,労作時呼吸困難)のうち1つまたは複数が生じ,心不全および不整脈を来すこともある。... さらに読む 大動脈弁狭窄症 大動脈縮窄症 大動脈縮窄症 大動脈縮窄症は,大動脈内腔の限局的な狭小化によって上肢高血圧,左室肥大,ならびに腹部臓器および下肢の灌流不良が生じる病態である。症状は奇形の重症度に応じて異なり,頭痛や胸痛,四肢冷感,疲労,跛行などから,劇症性心不全やショックに至るまで様々である。縮窄部上で弱い血管雑音が聴取されることがある。診断は心エコー検査またはCTもしくMRアンギオ... さらに読む )または肺血流(危機的な肺動脈弁狭窄症, 肺動脈閉鎖症 心室中隔欠損を伴わない肺動脈閉鎖症 その他の先天性心奇形としては,以下のものが挙げられる: 大動脈肺動脈窓 修正大血管転位症 両大血管右室起始症 エプスタイン奇形 さらに読む ,重症 ファロー四徴症 ファロー四徴症 ファロー四徴症は,大きな心室中隔欠損,右室流出路閉塞および肺動脈弁狭窄,右室肥大,ならびに大動脈騎乗という4つの特徴から構成される。症状としては,チアノーゼ,哺乳時の呼吸困難,発育不良,高度チアノーゼの"tet"spell(突然発生して死に至ることもある重度のチアノーゼ発作)などがある。胸骨左縁上部で粗い収縮期雑音が単一II音とともに聴取... さらに読む ファロー四徴症 などのチアノーゼ性心疾患)のいずれかを動脈管に依存していることから,動脈管の開存を維持することが重要となる。

重症(critically ill)の新生児では機械的人工換気がしばしば必要になる。酸素投与は肺血管抵抗を下げることになるが,これは特定の異常(例,左心低形成症候群)を有する乳児には有害となるため,酸素投与は慎重に行うか,場合によっては控えるべきである。

新生児心不全に対するその他の治療としては,利尿薬,強心薬,後負荷を軽減する薬剤などがある。利尿薬のフロセミドは,まず1mg/kgを急速静注し,尿量に基づいて漸増する。強心薬のドパミンまたはドブタミンは,点滴により血圧維持を補助できるが,心拍数と後負荷を増加させることで心筋酸素消費量が増大するという短所もある。これらの薬剤が先天性心疾患の乳児で使用されることはまれである。先天性心疾患の術後患者に頻用されるミルリノンは,陽性変力作用と血管拡張作用の両方を有している。ドパミン,ドブタミン,ミルリノンは全て不整脈リスクを増大させる可能性がある。純粋な血管拡張薬であるニトロプルシドは,術後高血圧に使用されることがある。0.3~0.5μg/kg/分で開始し,期待する効果が得られるまで漸増する(通常の維持量は約3μg/kg/分)。

月齢の高い乳児および小児における心不全

治療法としては,しばしば利尿薬(例,フロセミド0.5~1mg/kg,静注または1~3mg/kg,経口,8~24時間毎,必要に応じて漸増)やACE阻害薬(例,カプトプリル0.1~0.3mg/kg,経口,1日3回)が用いられる。カリウム保持性利尿薬(例,スピロノラクトン1mg/kg,経口,1日1回または1日2回,必要に応じて2mg/kg/回まで漸増)も有用となりうる(特に高用量のフロセミドが必要な場合)。β遮断薬(例,カルベジロール,メトプロロール)は慢性うっ血性心不全の患児にしばしば追加される。

ジゴキシンは以前より使用されなくなったが,大量の左右短絡がある心不全患者,特定の先天性心疾患術後患者では,なお有用となりうる(用量は年齢により異なる; 小児におけるジゴキシンの経口用量 小児におけるジゴキシンの経口用量* 小児におけるジゴキシンの経口用量* の表を参照)。注目すべきことに,ジゴキシンは,単心室症に対するNorwood手術後から第2期手術までの間に使用することで,死亡率を低下させる(1 治療に関する参考文献 先天性心疾患は,最も頻度の高い先天奇形であり,出生児の1%近くに発生する( 1)。先天異常のうち,先天性心疾患は乳児期死亡の主要な原因である。 乳児期に診断される最も頻度の高い先天性心疾患は,筋性部および膜性部 心室中隔欠損症であり,それに二次孔型 心房中隔欠損症が続き,これらを合わせた有病率は出生10... さらに読む 治療に関する参考文献 )。新生児上室頻拍の治療において,第1選択薬としてのジゴキシンの使用は,プロプラノロールよりも死亡率が高くなることから,使用される機会が減少している(2 治療に関する参考文献 先天性心疾患は,最も頻度の高い先天奇形であり,出生児の1%近くに発生する( 1)。先天異常のうち,先天性心疾患は乳児期死亡の主要な原因である。 乳児期に診断される最も頻度の高い先天性心疾患は,筋性部および膜性部 心室中隔欠損症であり,それに二次孔型 心房中隔欠損症が続き,これらを合わせた有病率は出生10... さらに読む 治療に関する参考文献 )。しかしながら,もし Wolff-Parkinson-White(WPW)症候群 リエントリー性上室頻拍(SVT),WPW症候群を含む リエントリー性上室頻拍(SVT)は,ヒス束分岐部より上位の要素を含むリエントリー性伝導路が関与する。患者には突然始まって突然停止する突発性の動悸がみられ,患者によっては呼吸困難や胸部不快感もみられる。診断は臨床および心電図所見による。通常,初期治療は迷走神経刺激による。それが無効に終わった場合,QRS幅の狭い調律,あるいは房室結節伝導を必... さらに読む がなければ,プロプラノロールが無効に終わった場合の第一の薬剤として,またはプロプラノロールやその他の抗不整脈薬と併用する第二の薬剤として,ジゴキシンが有用となる可能性がある。

酸素投与は心不全における低酸素血症を緩和して呼吸窮迫を軽減する可能性があるが,肺上皮損傷リスクを最小限にするため,可能であれば,吸入気酸素分画(FIO2)を< 40%に維持すべきである。酸素投与は,肺循環を増大させるため,左右短絡病変または左心系閉塞性疾患の患者では(使用する場合は)注意して使用すべきである。

一般に,食塩制限を含めた健康的な食事が推奨されるが,具体的な疾患や臨床像に応じて食習慣の変更が必要になることもある。心不全が代謝必要量を増加させる一方,合併する呼吸困難が哺乳をさらに困難にする。重症先天性心疾患を有する乳児では,特に左心系に閉塞性病変がある場合,壊死性腸炎のリスクを最小限に抑えるために授乳を控えることもある。左右短絡病変により心不全を来している乳児では,カロリー量を増やした栄養が推奨され,それによりカロリー補給量を増やすとともに,容量負荷のリスクを低減する。成長を維持するために経管栄養が必要になる場合もある。これらの対策で体重増加が得られない場合は,奇形の外科的修復が適応となる。

心内膜炎予防

  • 未修復のチアノーゼ性先天性心疾患(姑息的な短絡および導管手術を受けた患児を含む)

  • 完全に修復された先天性心疾患で,人工材料またはデバイスが使用された場合は術後6カ月間

  • 修復術後の先天性心疾患のうち,人工パッチまたはデバイスの使用部位またはその隣接部に欠損が遺残しているもの

  • 機械弁または生体弁

  • 心内膜炎の既往

治療に関する参考文献

  • 1.Oster ME, Kelleman M, McCracken C, et al: Association of digoxin with interstage mortality: Results from the Pediatric Heart Network Single Ventricle Reconstruction Trial Public Use Dataset.J Am Heart Assoc 5(1): e002566., 2016.

  • 2.Bolin EH, Lang SM, Tang X, et al: Propranolol versus digoxin in the neonate for supraventricular tachycardia (from the Pediatric Health Information System).Am J Cardiol 119(10): 1605–1610, 2017.

より詳細な情報

以下の英語の資料が有用であろう。ただし,本マニュアルはこれらの資料の内容について責任を負わないことに留意されたい。

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