メルクマニュアル18版 日本語版
検索のヒント
ABCDEFGHI
JKLMNOPQR
STUVWXYZ
記号

セクション

トピック

ファロー四徴症

ファロー四徴症は以下の4つの奇形から構成される:大きな心室中隔欠損,右室流出路閉塞,右心室肥大,および大動脈騎乗の4つの先天奇形から構成される。症状には,チアノーゼ,哺乳時呼吸困難,成長不良,無酸素発作(突如現われる死の可能性もある重度のチアノーゼ発作)などがある。粗い収縮期雑音が単一S2とともに胸骨左縁上部に聴取されることが多い。診断は心エコー検査または心臓カテーテル検査による。根治的治療は外科的修復である。心内膜炎予防が推奨される。

ファロー四徴症( 先天性心血管異常: ファロー四徴症では,肺血流は減少し,右心室は肥大,酸素化されていない血液が大動脈に流入する。図 6: イラスト参照)は先天性心奇形の7〜10%を占める。上記の4つ以外にも,右側大動脈弓(25%),冠動脈形態異常(5%),肺動脈分枝狭窄,大動脈肺動脈側副動脈の存在,動脈管開存,完全型房室中隔欠損,大動脈弁逆流など,他の先天性奇形を合併することが多い。

図 6

ファロー四徴症では,肺血流は減少し,右心室は肥大,酸素化されていない血液が大動脈に流入する。

ファロー四徴症では,肺血流は減少し,右心室は肥大,酸素化されていない血液が大動脈に流入する。

右心室,左心室,および大動脈内での収縮期圧は同等である。動脈血の酸素不飽和度は右室流出路閉塞の重症度と関係する。心房圧は平均圧である。AO=大動脈;IVC=下大静脈;LA =左心房;LV=左心室;PA =肺動脈;PV=肺静脈;RA=右心房;RV=右心室;SVC =上大静脈。

心室中隔欠損(VSD)は典型例では大きく開口しており,そのため左右両心室内(および大動脈内)で収縮期圧が等しくなる。病態生理は右心室流出路閉塞の程度によって決定される。軽度の閉塞ではVSDを介した左右短絡が生じるが,重度の閉塞では右左短絡が生じることにより,酸素補給に反応しない体循環動脈血飽和度の低下(チアノーゼ)を招く。

ファロー四徴症では,一部の患者で著明なチアノーゼの突発発作(“無酸素発作”)が発生することがあり,致死性のこともある。この発作は,わずかでも酸素飽和度を低下させるあらゆる事象(例,啼泣,排便),全身血管抵抗を急激に低下させるようなあらゆる事象,または頻拍もしくは血液量減少の突然の発生によって誘発される。以下のような悪循環を形成することがある:まず動脈血Po2の低下により呼吸中枢が刺激され,過呼吸が起きる。過呼吸が起きると,負の胸郭ポンプの作用がより効率的となることにより右心室への全身静脈還流が増加する。固定化した右室流出路閉塞または体血管抵抗の低下がある場合,右心室へ還流してきたこの増加した体静脈血は大動脈へと流れ込み,さらに動脈酸素飽和度を減少させることになり,このようにして低酸素発作の悪循環が形成されるのである。

症状と徴候

重度の右室流出路閉塞(または閉鎖)のある新生児では,重度のチアノーゼおよび体重増加不良を伴う哺乳時呼吸困難を来す。しかしながら最小限の閉塞しかない場合は,安静時ならばチアノーゼは発生しない。

四徴症発作は,身体運度によって誘発され,過呼吸発作(速く深い呼吸),過敏性および長時間の啼泣,チアノーゼの増加,および心雑音の減弱を特徴とする。この発作は幼若乳児に最も多くみられ,発生のピークは生後2〜4カ月である。重度の発作があると跛行,痙攣を来し,ときに死にも至る。歩行開始後間もなくの幼児では,遊戯中に間欠的に蹲踞位(体静脈還流を減少させる体位)を取る者が一部にみられるが,これは恐らく体血管抵抗を増大させ,それによって動脈血酸素飽和度を増加させようとしているものと考えられる。

聴診では,胸骨左縁上部で3〜5/6度の粗い収縮中期雑音が聴取される(VSDよりむしろ肺動脈弁狭窄)。S2は,肺動脈成分が著明に減弱するため,しばしば単一音となる。著明な右室拍動および収縮期振戦が聴取されることもある。

診断

診断は病歴および診察により示唆され,胸部X線および心電図により裏づけされ,カラードプラ法を用いた断層心エコー検査により確定される。

胸部X線では,肺動脈主幹部の陥凹を伴う木靴心像および肺紋理の減弱が認められる。25%に右側大動脈弓がみられる。心電図では右室肥大が認められ,さらに右房肥大が認められることもある。外科的修復を複雑にする合併異常を手術前に検出するため,心臓カテーテル検査の適応となることがしばしばある。

治療

動脈管の収縮のため重度のチアノーゼを発生する新生児では,プロスタグランジンE1(0.05〜0.1μg/kg/分,静脈内)の点滴投与により動脈管の再開通が図られる。

四徴症発作の治療は,乳児の膝胸位保持(児童期には通常自然に蹲踞位を取るようになっているため,無酸素発作は発生しない)およびモルヒネ0.1〜0.2mg/kgの筋肉内投与である。容積拡大には静脈内輸液が行われる。これらの処置で発作をコントロールできない場合は,フェニレフリン0.02mg/kgの静脈内投与またはケタミンの0.5〜3mg/kg静脈内投与もしくは2〜3mg/kg筋肉内投与により体血圧を低下させることができる(ケタミンには鎮静作用もある)。プロプラノロールの0.25〜1.0mg/kg,経口,6時間毎での投与により再発を防止できることがある。酸素補給の効果は限定的である。

完全な修復手術を行うには理想的な状態にない患者または四徴症発作のある患者の一部には,姑息手術を行ってもよい。最も多用されている術式である改良ブラロック-タウシッヒ短絡法では,人工血管を用いて鎖骨下動脈を同側の肺動脈に連絡する。

完全修復はVSDのパッチ閉鎖および右室流出路の拡張からなる。通常生後1年の間に選択的に行われるが,既に症状が現れている場合は,生後3〜4カ月以降ならばいつでも実施してよい。合併症のないファロー四徴症での周術期死亡率は3%未満である。無治療の患者では,生存率は5歳時で55%,10歳時で30%である。

外科的修復を受けたか否かにかかわらず本疾患の全ての患者は,菌血症を引き起こす恐れのある歯科的または外科的処置を受ける際には,実施前に心内膜炎の予防処置(心内膜炎: 口腔-歯科,気道,または食道に対する手技の際に推奨される心内膜炎予防*を参照 表 4: 表)を受ける必要がある。

最終改訂月 2005年11月

最終更新月 2005年11月

ページの先頭へ

前へ: 大動脈縮窄

次へ: 大血管転位

イラスト
個人情報の取扱いご利用条件