メルクマニュアル18版 日本語版
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薬物有害反応

薬物有害反応(または薬物有害作用,ADR)は,薬物がもたらしうる望ましくない,不快な,または危険な作用を指す広義の用語である。ADRは毒性の1つの型と考えられる;しかしながら,毒性とは最も一般的には,過剰摂取の作用(偶発的または意図的―中毒を参照 ),または適切に使用している間に生じる血中濃度の上昇や薬物作用の亢進(例,薬物代謝が疾患や別の薬物により一時的に阻害された場合)に適用される。副作用は不明確な用語で,治療域内で生じる薬物の意図しない作用に対してしばしば用いられる。全ての薬物がADRの可能性があるため,薬物を処方する際は必ずリスク-ベネフィット分析(有益性のもたらされる可能性をADRのリスクと比べて分析すること)が必要である。

米国では,全ての入院のうち3〜7%がADRによるものである。入院期間中10〜20%でADRが生じ,そのうち約10〜20%が重度である。ADRによる死亡率は不明である;提示されている0.5〜0.9%という比率は,調査した患者が重篤で合併症を有していたことから,実際より高いと思われる。

ADRの発生率および重症度は,患者の特性(例,年齢,性別,人種,併存疾患,遺伝的素因,地理的要因)や薬物に関連する因子(例,薬物の種類,投与経路,投与期間,用量,生物学的利用能)により変動する。年齢自体が根本原因となることはないだろうが,高齢者においてADRの発生率は高く,発生するADRはより重度である(高齢者における薬物療法: 高齢者における薬物有害反応を参照 )。処方過誤やアドヒアランス過誤がADR発生率へもたらす影響は不明である(薬物療法の概念: 投与レジメンへのアドヒアランスを参照 )。

病因

ほとんどのADRが用量依存性であり,それ以外のものはアレルギー性または特異体質によるものである。用量依存性の反応は通常予測できるが,用量非依存性のADRは予測できないことが多い。

薬物の治療係数が小さい場合,用量依存性のADRが特に懸念される(例,経口抗凝固薬による出血)。腎不全や肝不全の患者における薬物クリアランスの低下,または薬物-薬物相互作用により,ADRが生じることがある。

アレルギー性のADRは用量依存性ではなく,事前の暴露を必要とする。薬物が抗原やアレルゲンとして作用した場合にアレルギーが発現する。患者が感作されると,その後のその薬物への暴露により,いくつか異なるタイプのアレルギー反応のうちの1つが生じる(アレルギー性およびその他の過敏性疾患: 薬物過敏症を参照 )。臨床歴や適切な皮膚試験が,アレルギー性ADRの予測に役立つことがある。

特異体質とは,予測のつかないADRで,用量依存性やアレルギー性でないものを分類するのに使用される不明確な用語である。それらは,特定の薬物を投与された患者のうちごく一部に発生する。特異体質は,遺伝的に決定された薬物に対する異常な反応と定義されているが,全ての特異体質反応が薬理遺伝学的な原因を有するわけではない。ADRの具体的な機序が明らかになるにつれ,この用語は使用されなくなるだろう。

症状と徴候

ADRは通常,軽度,中等度,重度,致死的と分類される(薬物有害反応: 薬物有害反応の分類表 1: 表参照)。症状および徴候は,初回投与の直後に,または長期使用して初めて発現することがある。それらは明らかに薬物の使用が原因であることも,またあまりにも微妙で薬物関連と同定できないこともある。高齢者において,軽微なADRが機能の衰退,精神状態の変化,活力の低下,食欲の低下,錯乱,うつ状態をもたらすことがある。

表 1

薬物有害反応の分類

重症度

説明

軽度

解毒薬や処置は必要としない;入院期間は延長されない

中等度

処置の変更(例,投与量の変更,薬物の追加)は必要であるが,その薬物の中止は必ずしも必要ではない;入院期間が延長されたり,特異的な治療が必要となることがある

重度

生命を脅かす可能性があるADRで,その薬物を中止し,ADRに特異的な処置を必要とする

致死的

直接的または間接的に患者の死因となるADR

アレルギー性ADRは典型的には薬物の服用直後に発現するが,一般的に初回投与の後に生じることはない;初回の暴露後に,その薬物を投与したときに発生する。症状には,そう痒,発疹,固定薬疹,呼吸困難を伴う上気道や下気道の浮腫,低血圧がある。

特異体質性のADRは,ほとんど全ての症状や徴候を生じる可能性があり,通常は予測不能である。

診断

薬物の服用直後に生じる症状は,しばしば安易に薬物の使用と関連づけられる。しかしながら,薬物の長期使用による症状の診断は,相当な疑いを必要とし,複雑なことがしばしばである。薬物の中止が必要な場合もあるが,その薬物が不可欠であり,容認できる代用薬がないとそれは困難である。薬物と症状の関連性を示す証明が重要な場合,重篤なアレルギー反応を除き,再投薬が考慮されるべきである。

医師は最も疑いの濃いADRを,初期警告システムであるMedWatch(FDAのADRモニタリングプログラム)に報告すべきである。このような報告を通じてのみ,予期しないADRを同定し調査できる。MedWatchはまた,ADRの性質および頻度における変化を監視している。ADR報告の様式およびADR報告に関する情報は,Physicians' Desk Reference, AMA Drug EvaluationsおよびFDA Drug Bulletin(少なくとも1年に1回,全ての医師へ送付されている),そしてwww.fda.gov/medwatchから入手できる;様式は800-FDA-1088に電話することによっても入手できる。看護師,薬剤師および他の医療従事者もADRをMedWatchに報告すべきである。

予防と処置

ADRを予防するには,薬物およびその薬物によって起こりうる反応について精通していることが必要である。薬物相互作用の可能性をチェックするのに,コンピュータを利用した解析を使用すべきである;薬物を変更したり追加したりする際は必ず,解析を再び行うべきである。高齢者に対しては,薬物および初回投与量は注意して選択されるべきである(高齢者における薬物療法を参照 )。もし患者が非特異的な症状を発現したら,対症療法を開始する前に常にADRについて検討すべきである。

用量依存性のADRは,用量を変更したり,増悪因子を排除したり減少させたりすることで十分なことがある。薬物排泄速度を増大させることがまれに必要となる。アレルギー性や特異体質のADRについては,通常その薬物は中止されるべきで,再投与はすべきでない。異なるクラスへの薬物変更は,アレルギー性ADRではしばしば,用量依存性のADRではときに必要である。

最終改訂月 2005年11月

最終更新月 2005年11月

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