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下顎骨および中顔面の骨折

執筆者:

Sam P. Most

, MD, Stanford University Medical Center

レビュー/改訂 2020年 3月
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顔面の鈍的外傷により,上顎などの中顔面に骨折を来すことがある。症状は骨折部位による。歯科用X線写真またはCTで診断される。治療には手術および/または外固定を含むことがある。

外傷後の不正咬合がある患者,または下顎のある部位に局所腫脹および圧痛を認める患者では,下顎(下顎骨)の骨折が疑われる。他の手がかりは,歯の咬合面の欠損(段差),歯槽堤の断裂,および下歯槽神経またはオトガイ神経支配領域の感覚脱失などである。触知できる不安定性が生じる骨折もある。下顎関節突起の骨折は通常,耳介前部の疼痛,腫脹,および開口制限(開口障害)を引き起こす。片側性の関節突起骨折があると,開口時に顎が患側に偏位する。

眼窩上縁から上顎歯までの領域を含む中顔面の骨折により,頬,頬骨隆起,頬骨弓,または眼窩縁のなめらかな輪郭に不規則性が生じることがある。中顔面骨折の記載には,Le Fortの分類( Professional.see figure 中顔面骨折のLe Fort分類 中顔面骨折のLe Fort分類 中顔面骨折のLe Fort分類 )が使用できる。外傷性の不正咬合および上顎歯槽骨骨折は,咬合面を含む上顎骨骨折を示唆していることがある。

頬骨弓骨折は,開口障害および頬骨弓の触診時の異常により示唆される。同側の頬のくぼみは,腫脹のために最初は視認できないことがある。

顔面骨骨折に至るほど重度の外傷であれば,脳損傷および頸椎骨折の可能性もある。重度の衝突外傷では,顔面骨骨折による出血および浮腫によって気道が障害されることがある。

中顔面骨折のLe Fort分類

I型:上顎骨下方のみ;II型:眼窩下縁;III型:頭蓋骨からの中顔面の完全な分離(頭蓋顔面の分離)。

中顔面骨折のLe Fort分類

診断

  • X線および/またはCT

孤立性の下顎骨骨折に対しては,歯科用X線写真が望ましい。顔面骨骨折を診断するために,軸位断および冠状断で薄層CT(1mmスライス)を行う。

治療

  • 骨折の管理

  • ときに気管挿管,抗菌薬

歯槽骨骨折

歯槽を貫通する骨折は,開放骨折である。歯槽骨骨折では,液剤による経口または静注での抗菌薬の予防投与(典型的には,ペニシリンなど,特に嫌気性菌に対して効果的な広域抗菌薬による)が必要となる。

下顎骨骨折

骨折した下顎骨に対しては,治療は軟食摂取単独から,上下顎間固定(顎をワイヤーで閉じる),強固な観血的固定術,またはその両方まで様々である。受傷後数時間以内に固定術を実施できる場合,口唇または口腔の裂傷の閉創は骨折の整復後まで遅らせるべきである。上下顎間固定では,上下顎歯の頬側に金属のバー(アーチバー)を装着した後,適正な咬合が確立してから,ワイヤーでバーを相互に固定する。上下顎間固定を行っている患者は,嘔吐が起こったときに備えて常にワイヤーカッターを携行する必要がある。固定は数週間続ける必要があるが,通常は早期に動かすことが望ましい。食事は,流動食,ピューレ状の食品,および栄養補助食品に制限する。

歯の表面の一部しか磨けないため,毎朝夕に0.12%クロルヘキシジン30mLで60秒間含嗽して,プラーク形成,感染,および口臭を管理する。固定終了後は通常,開口訓練により機能回復を促す。

パール&ピットフォール

  • 上下顎間固定を行っている患者には,嘔吐が起こったときに備えて常にワイヤーカッターを携行させるようにする。

関節突起骨折では2~3週間の上下顎間固定およびその後の軟食摂取のみが必要となる。しかし,関節突起が両側性に骨折して重度に偏位している場合は,観血的整復固定術が必要となることがある。小児の関節突起骨折は強固に固定すべきではない(顎関節強直症 顎関節強直症 顎関節強直症は関節の不動化または癒合である。 ( 顎関節疾患の概要も参照のこと。) 顎関節強直症は,ほとんどの場合外傷や感染の結果生じるが,先天性または 関節リウマチの結果として生じることもある。慢性で無痛性の下顎運動制限が生じる。強直症が下顎頭の成長の停止の原因となる場合,顔面非対称が一般的にみられる( Professional.see page 下顎関節突起過形成)。 関節内(真性)強直症は,筋突起の増大,頬骨弓の陥没骨折,または外... さらに読む や顔面の発育異常を来すことがあるため)。通常,5~10日間の可動性のある(弾性)固定で十分である。

中顔面骨折

中顔面の骨折は,不正咬合,眼球陥入,複視,眼窩下神経の感覚脱失,または容認できない審美上の変形を引き起こす場合,外科的に治療する。外科的治療は通常,小さなネジとプレートを用いた内部の安定化から成る。多くの場合,腫脹が治まるまで手術を遅らせてよい(特に手術適応が不明な場合)。しかし,受傷後14日を超えると骨の仮骨により整復が困難になるため手術が必要な場合は,受傷後14日以内に行うのが最も望ましい。

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