メルクマニュアル18版 日本語版
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熱傷

(眼の熱傷は眼の外傷: 熱傷を参照 ,腐食性物質の誤飲は中毒: 腐食性物質の誤飲を参照 。)

熱傷とは,熱,放射線,ならびに化学的,または電気的な接触に起因する,皮膚およびその他の組織の損傷である。熱傷は,深度(1度,部分層,全層)および体表面積(BSA)に占める割合に基づいて分類する。合併症には,循環血液量減少性ショック,横紋筋融解,感染,瘢痕,関節拘縮などがある。広範(BSAの15%以上)に受傷した熱傷患者は,輸液療法を必要とする。熱傷の治療には,局所抗菌薬の投与,定期的な洗浄,挙上,時に皮膚移植などがある。関節の熱傷には,関節可動域訓練と副子固定が必要である。

米国では,熱傷により年間約3000人が死亡しており,約百万件の救急外来の受診がある。

病因と病態生理

熱傷は,あらゆる外部熱源(火炎,液体,固体,気体)が原因となる。火事は,毒素吸入の原因となることもある(熱傷: 煙の吸入を参照 囲み解説および 中毒: 一酸化炭素(CO)中毒を参照 )。

囲み解説 1

煙の吸入

熱傷および煙吸入は,同時に起こることが多いが,別々に起こることもある。煙を吸入すると,燃焼で生じる有毒物質および,時には熱が,気道組織を損傷する。吸入した気体の熱負荷は,通常全てが上気道にもたらされるため,熱は上気道のみを損傷するのが一般的である。蒸気は例外の一般例であり,しばしば下気道に熱傷を起こす。日常で発生する住宅火災で生じる有毒化学物質の多く(例,塩化水素,ホスゲン,二酸化硫黄,中毒性アルデヒド,アンモニア)は,下気道に加え,時に上気道も刺激して損傷する。燃焼による有毒生成物には通常,一酸化炭素またはシアン化物があり(中毒: 一酸化炭素(CO)中毒を参照 ),細胞呼吸を全身性に障害する。

上気道傷害は通常,数分以内に症状を呈するが,症状が現れるのに数時間を要することもあり,上気道の浮腫により喘音が生じることもある。下気道の損傷では通常,24時間を越えて症状(例,息切れ,喘鳴音,時に咳,胸痛)が現れる。

呼吸器症状がみられる患者,長時間にわたり燃焼環境に閉じ込められていた患者,煤の混じった痰が認められる患者などでは,煙吸入を疑う。

閃光熱傷(例,ガス調理器の着火による)でなければ,口周囲熱傷および焦げた鼻毛も手がかりとなる。上気道傷害は,上気道および気管を十分に検査でき,気道の浮腫や煤を確認できる内視鏡検査(喉頭鏡検査または気管支鏡検査)を用いて診断を下すが,当初の試験結果が正常でも後日傷害が発現することもある。内視鏡検査は通常,軟性のファイバースコープにより,できるだけ早期に実施する。下気道の傷害は,胸部X線およびオキシメトリーまたは動脈血ガスにより診断を下すが,約24時間は,診断は明らかでない。

煙吸入の危険が考えられる患者全員に,診断が下るまでの間,フェイスマスクにより100%酸素を投与する。気道閉塞または呼吸不全が認められる患者には,気管内挿管などの人工気道および機械的人工換気が必要である(呼吸不全および機械的人工換気: 機械的人工換気の方法とモードを参照 )。上気道に浮腫や大量の煤が認められる患者の場合,浮腫が増大すると挿管が困難になるため,できるだけ早く気管内挿管を実施する必要がある。下気道に受傷した患者には,酸素補給,気管支拡張薬,およびその他の支持療法が必要である。

放射線熱傷は,太陽の紫外線に長時間暴露して引き起こされるもの(日焼け)が最も一般的であるが,その他の紫外線放射源(例,日焼け用ベッド),X線源,または太陽以外の放射線への長時間,高強度の暴露に起因することもある。

化学熱傷は,強酸,強アルカリ(例,アルカリ溶液,セメント),フェノール,クレゾール,マスタードガス,リンなどが原因である。こうした物質による皮膚および深部組織の壊死は,数時間以上にわたり進行する。

電気熱傷(電撃傷および雷撃傷: 電撃傷も参照 )は,電気による発熱に起因し,見かけ上非常にわずかな皮膚損傷も,広範に深部組織を損傷していることがある。

熱傷に伴う事象(例,炎上する建物からの飛び降り,がれきが当たる,自動車衝突事故)が,他の傷害を引き起こすこともある。

熱傷は,蛋白を変性させ,凝固壊死を来す。熱傷を負い凝固した組織の周りは,血小板が凝集し,血管が狭窄し,辺縁の灌流組織(うっ滞ゾーンとして知られる)が壊死する可能性がある。うっ滞ゾーンの周囲では,組織が充血し炎症を起こす。正常表皮のバリアが損傷すると,細菌の侵入,および体液の外部への漏出を許すことになる;損傷した組織はしばしば浮腫性となり,脱水をさらに亢進させる。真皮が損傷して体温調節が障害され,また,体液漏出が蒸発性熱放散を増大させるため,熱損失が重大となることがある。

深度: 熱傷は,皮膚の受傷の深さによって分類される。1度熱傷は,表皮に限定されたものである。部分層(2度)熱傷は,真皮の一部まで及ぶもので,さらに表層性熱傷と深達性熱傷に分類される。表層性の部分層熱傷は,真皮の上部12に及ぶものである。この深度の熱傷は,2〜3週間以内に治癒する。皮膚の修復は,汗腺や毛を裏打ちする表皮細胞から始まる;この細胞が表面に向かって再生し,表面を移動して隣接する腺および濾胞由来の細胞と出会う。2〜3週間以内に治癒する熱傷は,感染を起こさない限り,瘢痕化することはまれである。深達性の部分層熱傷は,真皮の下部12に及び,通常,治癒は3週間以上を要し,修復は毛嚢からしか起こらない。瘢痕化することが多い。全層(3度)熱傷は,真皮を超えて,その下の脂肪層に及ぶものである。修復は,熱傷部の周辺からしか起こらず,こうした熱傷には,小さなものでない限り,皮膚移植が必要である。

合併症

全身性: 熱傷部位がBSAに占める割合が高いほど,全身性合併症が発現するリスクが大きい。重度の全身性合併症および死亡率の危険因子には,BSAの40%以上の熱傷,年齢60歳以上または2歳以下,および重度の外傷の併存または煙の吸入などがある。

最も一般的な全身性合併症は,血液量減少および感染である。熱傷組織の循環不全および,時にショック症状を引き起こす血液量減少は,熱傷の深度が深いまたは熱傷が体表の広範囲に及ぶことで引き起こされる体液喪失に起因する。熱傷組織の循環不全は,血管の直接的な損傷または,血液量減少に続発する血管狭窄からも起因する。熱傷が小規模の場合でも,局所合併症と同様,感染は敗血症および死亡の原因となりうる。ホストの防御機能が低下し,組織が失活すると,細菌の侵入および増殖が亢進する。最も一般的な病原体は,最初の数日はレンサ球菌およびブドウ球菌,5〜7日後はグラム陰性菌であるが,常に混合叢を呈する。

代謝異常には,血液希釈(補液により二次的に発生),および損傷した毛細血管から血管外への蛋白喪失に起因する,低アルブミン血症などがある。低アルブミン血症および血液希釈は低カルシウム血症の原因となるが,カルシウムイオン濃度は通常,正常を維持する。他の希釈性電解質欠乏も発現する可能性があり,これには低マグネシウム血症,低リン酸血症などがあり,特にカリウム排出性利尿薬を服用する患者では,低カリウム血症が認められる。しかし,広範囲の組織破壊は,高カリウム血症を引き起こす。ショックは代謝性アシドーシスを引き起こす。筋肉に及ぶ深い熱傷や電気熱傷,もしくは収縮性の焼痂による筋虚血に起因して,横紋筋融解または溶血を来すことがある(後述参照)。ミオグロビン尿症を来す横紋筋融解,またはヘモグロビン尿症を来す溶血は,急性尿細管壊死を引き起こすことがある。

大量の冷たい静脈内輸液を受け,救急治療部の低温環境に体表を長時間暴露すると,特に広範に受傷した熱傷患者では,低体温症を起こすことがある。電解質異常,ショック,代謝性アシドーシスおよび,時に低体温症にも続発して,心室性不整脈が発現することがあり,煙を吸入した患者では,低酸素症などを来すことがある。広範囲熱傷後には,腸閉塞がよくみられる。

局所: 全層全周性熱傷は,拘縮性の焼痂を形成しうる。四肢周辺の拘縮性焼痂は,局所虚血を起こすことがあり,胸郭周辺の拘縮性焼痂は,呼吸を損なうことがある。

深い熱傷の自然治癒は過剰な肉芽組織をもたらし,瘢痕や拘縮を来し,熱傷が関節,手足,または会陰付近の場合には,機能が重度に低下する可能性がある。感染は,瘢痕を増大させうる。熱傷患者では,特に黒人の場合,ケロイド形成をみる場合もある。

症状と徴候

1度熱傷は赤く,軽く押すと広範,かつ著明に白くみえ,疼痛,圧痛がある。小胞や水疱は生じない。

表層性の部分層熱傷は,押さえると白くみえ,疼痛と圧痛がある。小胞や水疱は24時間以内に生じる。小胞と水疱の基部はピンク色でその後,線維性滲出液が滲出する。

深達性部分層熱傷は白,赤,または赤と白のまだらなどの色を呈する。押したときに白くなることはなく,表層性の熱傷と比べて疼痛および圧痛は弱い。針刺し検査は,刺すというよりむしろ加圧と解釈されることが多い。小胞や水疱が生じることもあり,こうした熱傷は通常,乾燥している。

全層熱傷は,白く柔軟か,黒く焦げているか,褐色でなめし革様か,皮下領域にヘモグロビンが固定されるために明るい赤を呈することもある。蒼白の全層熱傷は,押しても皮膚が白くみえないこと以外は,正常な皮膚のようにみえる。全層熱傷には通常,無感覚か感覚脱失がみられる。毛包から毛を容易に抜くことができる。通常,小胞および水疱は生じない。全層熱傷と深達性部分層熱傷とを鑑別する特徴が発現するのに,数日を要することがある。

診断

所見は急速に変化するため,患者が安定したら即座に熱傷創を精査する。熱傷領域の部位および深度を熱傷図に記録する。深達性部分層熱傷とも全層熱傷ともみえる熱傷は,鑑別が可能になるまで,全層熱傷とする。受傷した体表面積の割合を算定するが,部分層熱傷および全層熱傷のみを計算対象とする。成人では,体表面積に占める割合を,体の部位別に9の法則(熱傷: 熱傷範囲を算定するための,(A) 9の法則(成人用)および(B)ランド-ブラウダーチャート(小児用)。図 1: イラストAを参照)に基づいて算定する。散在する小規模の熱傷に関しては,患者の掌表面のサイズ(BSAの約1%)に基づいて算定する。小児は,頭部が大きく,大腿部が小さいため,ランド-ブラウダーチャートを使用して,体表面積に占める熱傷範囲の割合を算定する(熱傷: 熱傷範囲を算定するための,(A) 9の法則(成人用)および(B)ランド-ブラウダーチャート(小児用)。図 1: イラストBを参照)。

図 1

熱傷範囲を算定するための,(A) 9の法則(成人用)および(B)ランド-ブラウダーチャート(小児用)。

熱傷範囲を算定するための,(A) 9の法則(成人用)および(B)ランド-ブラウダーチャート(小児用)。

(Redrawn from Artz CP, JA Moncrief: The Treatment of Burns, ed. 2. Philadelphia, WB Saunders Company, 1969; used with permission.)

入院が必要な場合は(熱傷: 初期治療を参照 ),Hb,Hct,血清電解質濃度,BUN,クレアチニン,アルブミン,蛋白,リン酸,カルシウムイオンを測定すべきであり,心電図,ミオグロビンを対象とする尿検査,胸部X線も実施する必要がある。 全体に色が濃く,または顕微鏡下で赤血球は存在しないが,ディップスティック検査で潜血陽性の尿は,ミオグロビン尿を示唆する。こうした検査は,必要に応じて繰り返す。

創からの滲出液,創傷治癒の障害,感染を示す身体所見(例,発熱,白血球増加)などにより,感染は示唆される。診断が確定できない場合は,生検により感染を確認できるが,創表面または滲出液からの培養は信頼性に欠ける。

治療

初期治療: 治療は,入院以前の段階から始まる。第一に優先することは,全ての負傷患者にに関しても同様に,ABC(気道,呼吸,循環)である。気道を確保し,換気を補助し,煙の吸入が疑われる場合には,100%酸素を投与する(熱傷: 煙の吸入を参照 囲み解説 1: 囲み解説)。燃え続けている火は消火し,くすぶって熱をもつ物は除去する。衣服を全て脱がせる。粉末以外の化学物質は水で洗い流す;粉末は濡らす前に払い落とすべきある。 酸,アルカリ,有機物質(例,フェノール,クレゾール)による熱傷は,大量の水で何度も洗い流し,原因溶液が全く残留していないと思われた時点からも少なくとも20分間は継続する。

ショック状態にあるか,熱傷がBSAの15%以上の患者には,静脈内輸液を実施する。可能であれば,熱傷を負っていない皮膚から14〜16ゲージの静脈カニューレを入れて末梢静脈1〜2カ所に留置する。静脈切開は感染の危険が高いので避ける。

初期の輸液療法は,臨床的にショック症状が明らかな場合の治療法を指針とする(ショックおよび輸液蘇生術: 予後と治療を参照 )。ショック症状を呈していない場合,輸液の目的は,欠乏体液の補充,および維持液の供給とする。 Parkland公式を用いて,欠乏体液の補充に必要な輸液量を計算する;同公式によれば,最初の24時間は,3mL/kg/%BSAの晶質液(乳酸加リンゲル液)とする(例,体重70kgで,BSAの40%の熱傷の場合,最初の24時間は,3mL × 70 × 40 = 8400mL)。この半量を推定受傷時間から起算して最初の8時間に投与,残量を続く16時間に投与する。幼少でも高齢でも,心疾患があっても,大きな熱傷に対しては2日目にコロイドを投与する臨床医もいる。

低体温症を治療し(寒冷障害: 低体温を参照 ),疼痛を緩和する。常にオピオイドを静注する。過去に破傷風トキソイドを必要な回数接種を受けているが,過去5年以内に追加接種を受けていない患者に対しては,破傷風トキソイドの追加接種(0.5〜1mLを皮下注または筋注)を実施し,最後の追加接種がさらに前であるかまたは必要な回数の接種を受けていない患者に対しては,破傷風免疫グロブリン250単位を筋注し,活性ワクチン療法を併用する(嫌気性菌: 予防を参照 )。

小規模の熱傷は早期に冷水につけると軽減されることがあるが,この方法が熱傷が深部に及ぶのを止めるという裏づけはない。鎮痛後,創傷を石鹸と水で洗い,洗い流せる残屑を除去する。掌,指,足の裏の小さなものは除き,水疱を除去する。熱傷センターに搬送する場合,乾燥した清潔な包帯を当ててもよく(熱傷用クリームは搬送先における熱傷評価を妨げる),患者の体を温かく保ち,オピオイドによりいく分苦痛を軽減する。

創傷清拭後,清潔な環境で,熱傷表面を局所抗菌薬軟膏と滅菌包帯で覆う。最も一般的に投与される局所抗菌薬は,1%スルファジアジン銀クリームである。この薬剤は広域抗菌スペクトルを示すが,サルファ剤感受性の患者は,使用中に疼痛または局所的な発疹を来すなどのアレルギー反応を起こす場合がある。この薬剤は,通常臨床的に問題にならないが,軽症の一過性白血球減少症を起こすこともある。

焼痂切開は,胸郭の十分な拡張や,四肢の血流確保に必要な場合もあるが,数時間以内に熱傷センターへ搬送できるのであれば,ほとんどの場合,焼痂切開はそれまで延期する。

抗生物質の予防的投与は行わない。

初期治療を終えて安定したら,入院要否を評価する。入院加療は,BSAの1%以上の全層熱傷,BSAの5%以上の部分層熱傷,深度に関係なくBSAの10%以上の熱傷,および手,顔,足,会陰の部分層またはそれ以上の深度の熱傷に対して必要であり,熱傷センターへの入院が好ましい。2歳以下か60歳以上の患者,在宅治療へのこだわりがあまりないかまたは困難であると思われる患者(例,在宅では,手や足を継続的に挙上することが困難な場合)には,入院が必要となることがある。専門家の多くが,BSAの1%以下の1度の熱傷を除き,熱傷は全て経験豊かな医師が治療することを推奨しており,BSAの2%以上に及ぶ熱傷は全て短期間入院加療することを強く勧めている。多くの患者と介護者にとって,適切な鎮痛と運動を継続するのは困難である可能性がある。

継続的な水分必要量と全身性合併症: 必要である限り,水分を投与し,全身性合併症は補助療法で治療する。継続的な水分必要量は,公式よりも臨床反応に基づいて判断する。目標は,ショックの回避,満足の行く尿量の維持,水分の過剰投与や心不全の回避である。十分な尿量とは,成人で30mL/時(0.5mL/kg/時)以上,小児で1mL/kg/h時である。大量の晶質液を投与しても尿量が不十分の場合は,熱傷センターでの診察が必要である。このような患者には,コロイドを含む混合液が奏効する。膀胱カテーテルを留置し,尿量を測定する。尿量,ショックや心不全の徴候などの臨床的パラメータを,フローチャート上に最低1時間毎に記録する。

横紋筋融解の治療は,尿中にミオグロビンが認められなくなるまで尿量を成人で100mL/時,小児で1.5mL/kg/時に維持するのに十分な輸液,ならびに,マンニトール溶液0.25mg/kg,4〜8時間毎に静注することにより行う。ミオグロビン尿が重度の場合は(通常,皮膚の相当範囲が炭化した熱傷,または高圧電流による熱傷に限られる),受傷した筋肉を外科的に除去する。原因(例,電解質異常,ショック,低酸素血症)を正常に戻せば,安定型不整脈の大部分は消失する。疼痛は,通常モルヒネ静注により抑制する。電解質欠乏の治療には,Ca,Mg,K,リン酸(PO4)などの補給が必要である。栄養補給(栄養の補給を参照 )は,BSAの20%以上に受傷した熱傷患者,または受傷前から栄養不足の患者に適応となる。栄養チューブによる補給は,できるかぎり早期に開始する。非経口的補給が必要となることはまれである。

最初の7日間に感染が明らかであるとき,経験に基づいた初期の抗生物質療法では,ブドウ球菌およびレンサ球菌を対象に含める(例,ナフシリンによる)必要がある。7日目以降に発現する感染は,グラム陽性菌にもグラム陰性菌にも有効な抗菌スペクトルがより広域な抗生物質を用いて治療する。抗生物質選択は,培養と感受性検査の結果に基づいて,引き続き調整する。

包帯交換: 包帯は通常,毎日交換する。熱傷を完全に清拭し,残留した局所抗菌薬を水で完全に洗い落とす。その後,必要に応じて創傷を切除し,新たに局所抗菌薬を塗布し,軟膏が落ちないように軽く包帯をあてがう。腫脹が治まるまで,熱傷を負った四肢,特に下肢と手は可能な限りは常時,心臓の位置より高く挙上する。

手術: 手術は,3週間以内に治癒する見込みのない熱傷が適応となり,ほとんどの深達性部分層熱傷および全ての全層熱傷が対象となる。敗血症を予防し早期の植皮を促進するために,できるだけ早期に,理想的には7日以内に焼痂を切除すると,入院期間が短縮され,機能の回復が向上する。熱傷が広範囲で,生命にかかわる場合は,大きな焼痂から優先的に切除し,できるだけ広範囲の熱傷創を早期に除去する。このような熱傷治療は,熱傷センターに限定すべきである。焼痂を除去する順序は,経験を積んだ熱傷専門外科医の判断に従う。

切除後,理想的には永久使用できる部分層自己移植片(患者自身の皮膚)を用いて植皮を進める。自己移植片をシート(切り目を入れていない皮膚切片)として移植することも,メッシュ状移植片(一定間隔で細かい切り目を入れて,より広い範囲を覆うように伸展したドナーの皮膚切片)を移植することも可能である。メッシュ状移植片は,ドナーの皮膚が乏しく,熱傷がBSAの20%以上に及ぶ場合に,外見がそれほど問題とならない個所に用いる。メッシュ状移植片は治癒すると,不均等な格子状の概観を呈して,時に肥厚性瘢痕を残すことがある。熱傷がBSAの40%以上で,自己移植片の供給が不十分であると考えられる場合には,人工培養皮膚被覆材を使用できる。次善の策として,同種移植片(通常,死亡したドナーからの生着能のある皮膚)を使用できるが,拒絶反応が生じ,時には10〜14日間以内に生着しないこともあり,最終的には自己移植片と置き換えなければならない。

理学療法: 理学療法は入院時に開始するが,瘢痕化および拘縮を最小限にとどめるために,特に皮膚の緊張が強く,頻繁に動かす体表部(例,顔,胸部,手,関節,太もも)に対して実施する。初期の浮腫が軽減すれば,能動的および受動的関節可動域訓練も容易になり,皮膚を移植するまで1日1〜2回実施する。植皮術後5日間は訓練をいったん休止し,その後再開する。部分層ないし全層熱傷を負った関節は,できるだけ早く機能的な位置に副子で固定し,植皮を実施して治癒するまで,そのまま固定を継続する(訓練の最中は除く)。

外来治療: 外来治療では,熱傷を清潔に保ち,できる範囲で受傷部位を挙上するようにする。入院患者と同様,軟膏を塗った包帯を用いて,交換する。外来患者の経過観察は,熱傷の重症度による必要度に応じてスケジュールを決める(例,非常に軽度の熱傷では,24時間以内に初回の外来,その後5〜7日に1回)。外来では,適応がある場合には壊死組織切除,熱傷深度の再評価,理学療法および植皮の要否の評価などを実施する。発熱,化膿性分泌物,上行性のリンパ管炎,最初の24時間以降に疼痛が増大したり,紅斑が白くなったり,または圧痛が増大したりする場合は,感染が疑われる。2〜60歳の健康な患者に軽度の蜂巣炎がある程度では外来加療が可能であり,この他の感染症では入院が適応となる。

最終改訂月 2005年11月

最終更新月 2005年11月

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