スポーツ参加のためのスクリーニング

執筆者:Paul L. Liebert, MD, Tomah Memorial Hospital, Tomah, WI
レビュー/改訂 2020年 1月
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    アスリートは一般的に,スポーツ競技に参加する前にリスクを同定するためのスクリーニングを受ける。米国では,2年毎(高校生の年齢層)または4年毎(大学生以上の年齢層)に再評価される。欧州では,年齢にかかわらず,2年毎にスクリーニングが繰り返される。

    心血管系のスクリーニング

    全ての小児および成人に対するスクリーニングには,以下のものに関する質問により,詳細な心血管系の病歴を含むべきである:

    身体診察では,両腕の血圧測定,仰臥位および立位での心臓聴診,マルファン症候群の特徴の視診をルーチンに含めるべきである。これらの測定の目的は,生命を脅かす心イベント(例,不整脈,肥大型心筋症,または他の構造的心疾患のある人)のリスクが高い成人と,一見健康ながら高リスクの若者とを識別することにある。

    検査は臨床的に疑われる疾患を対象として施行する(例,冠動脈疾患に対する運動負荷試験,構造的心疾患に対する心エコー検査,不整脈またはQT延長症候群に対する心電図)。症状や徴候,もしくは危険因子が存在しない場合,ルーチンの負荷試験は推奨されない。欧州のガイドラインは,全ての小児,青年,および大学年齢のアスリートを対象として心電図によるスクリーニングを推奨しており,この点で米国のガイドラインと異なっている。

    スポーツ心臓およびアスリートにおける心臓突然死も参照のこと。)

    その他のスクリーニング測定

    心血管系以外の危険因子は,心血管系危険因子よりも一般的である。成人に,以下の項目に関する問診を行う:

    • 以前または現在の筋骨格系の損傷(脱臼しやすい状態も含む)

    • 関節障害,特に主な荷重関節(例,膝関節,足関節,股関節)を侵すもの

    • 脳振盪

    • 喘息

    • 全身性感染を示唆する症状

    • 熱関連の疾患

    • 紫斑ができやすいまたは易出血性

    • 痙攣

    次の2つの損傷リスクが高い集団は,看過されることが多い:

    • 晩熟型の男児は,体が大きく体力のある少年とのコンタクトスポーツで損傷するリスクが高いと考えられる。

    • 過体重または肥満の人は,自身の過剰な体重とそれに関連して関節や組織に加わる力が原因で,筋骨格の問題のリスクが高い。リスクの1つは,オーバーユース損傷と軟部組織の炎症であり,とりわけ運動の強度を高めたり持続時間を延ばしたりするのが急激すぎる場合に起こりやすい。長期的には荷重関節に変形性関節症を来すリスクがある。さらに,跳躍や高い敏捷性が求められる運動に参加した場合は,動作の急な停止と開始を行うことによる損傷のリスクもある。

    青年および若年成人には,違法な薬物および運動能力向上薬の使用について質問すべきである。U.S. Anti-Doping Agencyのウェブサイトを参照のこと。)

    女児と若年女性では,スクリーニングで初潮の遅れを検出すべきである。女児と若年女性に対し,女性アスリートの三主徴(摂食障害無月経またはその他の月経不順骨密度の減少)の有無について,スクリーニングを行うべきである。摂食障害のスクリーニング方法として,以下の2つの質問について妥当性が確認されている:

    • これまでに摂食障害を患ったことはありますか。

    • 今の体重に満足していますか。

    禁忌

    スポーツへの参加に対する絶対的禁忌はほとんどない。

    小児には以下の例外がある:

    • 心筋炎(心臓突然死のリスクを上昇させるため)

    • 肥大型心筋症(心拍が増加し,心臓突然死のリスクが高まるため)

    • 急性脾臓腫大または最近の伝染性単核球症(エプスタイン-バーウイルス感染症)(脾破裂のリスクがあるため)

    • 症候性または持続性の発熱(運動耐容能が低下し,熱関連の疾患のリスクが高まる可能性があるうえ,重篤な疾患の徴候でありうるため)

    • おそらくではあるが,激しい下痢および/または最近の激しい嘔吐脱水のリスクがあるため)

    成人には以下の例外がある:

    相対的禁忌はより一般的で,以下のように予防策を講じること,または比較的望ましいスポーツに参加することが推奨される:

    • 脱臼を繰り返しているか簡単に脱臼したという既往がある人や,脳振盪の既往が複数回ある人は,身体接触や衝突を伴わないスポーツに参加すべきある。

    • 精巣が1つしかない男性は,ほとんどのコンタクトスポーツで保護カップを着用すべきである。

    • 耐暑性低下(heat intolerance)および脱水のリスクが高い人(例,糖尿病嚢胞性線維症鎌状赤血球症もしくは鎌状赤血球形質を有する人,または熱関連の疾患の病歴を有する人)は,運動中に頻繁に水分を補給すべきである。

    • 発作の制御が最適でない人は,水泳,重量挙げ,およびアーチェリーやライフル射撃などのスポーツは(他者への損傷を予防するために)避けるべきである。

    • 喘息患者は,自身の症状を綿密にモニタリングする必要がある。

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