メルクマニュアル18版 日本語版
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マダニ刺咬傷

スピロヘータ: ライム病を参照 [ライム病],リケッチア属および類似する微生物を参照 ,腸外原虫: バベシア症を参照 [バベシア症]も参照。)

米国におけるマダニ刺咬傷の大部分はマダニ科の多様な種によるものであり,除去しなければ数日間付着し吸血する。

マダニ刺咬傷はほとんどの場合春と夏に生じ,痛みはない。合併症がなく,疾病を伝播しない例が圧倒的多数であり,しばしば咬傷部位に赤い丘疹を引き起こし,過敏性や肉芽腫性異物反応を誘発することがある。Ornithodoros coriaceusダニ類(パハロエヨダニ)による刺咬傷は,局所の小胞形成,破裂を伴う膿疱,潰瘍形成,痂皮を引き起こし,局所の様々な程度の腫脹および痛みを伴う。その他のマダニによる刺咬傷でも,同様の反応が生じている。

治療

皮膚の免疫反応および疾病伝播の可能性を減じるため,マダニをできるだけ早く除去するべきである。患者にまだダニが付着しているのを認めた場合,口器も全て含めてマダニを皮膚から引き抜く最良の方法は,中型の無鈎先曲鉗子を用いることである。鉗子を皮膚に平行に構え,マダニの口器のできるだけ皮膚に近い部位をしっかりとつかむ。患者の皮膚やマダニの虫体を穿刺しないよう注意すべきである。鉗子をゆっくりと着実に引き,ひねらずまっすぐ皮膚から引き抜く。先曲鉗子が最良なのは,先端を皮膚にあてても持ち手が皮膚から十分離れており把持しやすいからである。皮膚に残存し容易に視認できるマダニ口器部分は,注意深く除去すべきである。しかし,口器部分の残存が疑わしい場合は,外科的な除去を試みても,口器部分が皮内に残って生じる損傷より大きな組織損傷を与える可能性がある;口器部分を皮内に残しても疾病伝播には影響なく,せいぜい刺激が長引く程度である。マダニをマッチで燃やす(患者の皮膚に損傷を与える可能性がある),ワセリンでおおう(効果はない)などの,その他のマダニ除去法は推奨されない。

マダニの除去後は消毒薬を塗布するべきである。マダニの充血の程度から付着していた期間が分かる。局所の腫脹や退色があれば,経口抗ヒスタミン薬が有用となりうる。実用性があることはまれだが,ダニが患者に付着した地域において,ダニ媒介疾患の病原因子を検出するため,実験分析用にマダニを保存する場合がある。マダニ媒介性感染症予防のための抗生物質は通常推奨されないが,一部専門家はライム病有病率が高い地域でのマダニ刺咬傷に対して,ライム病予防(ドキシサイクリン200mg,単回経口投与)を推奨している(スピロヘータ: 予防を参照 )。

パハロエヨダニによる病変は洗浄し,1:20のブロー液に浸し,必要に応じて壊死組織を切除する。重症例では副腎皮質ホルモン剤が有用である。感染は潰瘍期に一般的であるが,局所消毒以上の処置を要することはまれである。

マダニ麻痺

マダニ麻痺はまれに起こる上行性弛緩麻痺であり,マダニ科の毒素を分泌するマダニが刺咬し数日間付着し続けた場合に起こる。

北米では,カのマダニ属(Dermacentor)およびキララマダニ属(Amblyomma)の数種が,唾液中に分泌される神経毒によりマダニ麻痺を引き起こす。この毒素は吸血の初期段階ではマダニの唾液中に存在しないので,麻痺はマダニが数日間以上吸血していた場合にのみ起こる。特に後頭部や脊椎付近にマダニが付着した場合は,麻痺の原因が1匹である可能性があるが,複数のマダニがいないか全身の体表をくまなく探すべきである。

症状と徴候には,食欲不振,嗜眠,筋脱力,協調運動障害,眼振,上行性弛緩麻痺などがある。延髄麻痺や呼吸麻痺が起こることもある。鑑別診断は,ギラン-バレー症候群,ボツリヌス中毒,重症筋無力症,低カリウム血症,脊髄腫瘍などである。マダニ麻痺は(1匹もしくは数匹の)マダニを除去すれば急速に回復する。呼吸が障害された場合は,酸素療法や呼吸補助が必要となることがある。

最終改訂月 2005年11月

最終更新月 2005年11月

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